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今年3月発売予定の難病と在宅ケアの原稿として、以下のような記事が掲載されます。

世界の神経筋疾患のセンターでもある英国から、このような見解(Neuromuscular disorders:医学雑誌に載っていました)は、また、多くの人達に知っておいてほしい事です。
DMDに限らず、FSHDでも同じことと考えられます。 

「遺伝子治療などの根本治療のスタートラインはどこ? 現在可能な治療により、予後に大きな違いが出ている(エキスパートの治療チームが早期から関わるかどうかにより)」

以前は、国立精神・神経医療研究センター武蔵病院名誉院長が編集委員の一人を務められ、今は国立精神・神経医療研究センター研究部長が編集委員の一人に名を連ねられているNeuromuscular disordersという神経筋疾患
医学専門誌があります。小児神経学の祖と言われる
Dubowitz(デュボヴィッツ)先生が編集長をされています。

その2015年の年末号に、デュボヴィッツ先生が、論説を書かれました。

「自然ではないDMDの自然歴」という題名です。そこでは、最近のDMDの自然歴は、むしろ、”現在可能なあらゆる介入を行ったDMD”とすべきとしています。そして、これは、国ごとでも違うし、センターごとにも違いがあると指摘しています。特に、エキスパートの治療体制が、診断後早期から活用できるかによって、違いが大きいとしています。この論説のもとになる総説はRicotti(リコッティ)先生達が書いており、DMDの自然歴は、近年の研究により、随分変化したと指摘しています。その代表論文3つのうち2つは、イギリスのRicotti本人達の論文と、DMDケアの国際ガイドラインをまとめたBushby達(ニューキャッスル神経筋センター)の論文です。そして、残りの1つが八雲病院からの論文です。また、心臓に関しても、ACE阻害剤やベータブロッカーが有効であるとされています。その根拠となる論文3つのうち2つは、フランスのDuboc先生の論文です。残りの1つは八雲病院診療援助の循環器内科医と八雲病院石川先生の共著論文です。


「自然ではないDMDの自然歴」の論文には、57の引用文献がありますが、そのうち、日本からは、八雲病院からの2編です。デュボヴィッツ先生、リコッティ先生達は、現在、遺伝子治療など根本治療の開発をするにあたって、スタートラインとされる“DMDの自然歴”が大きく違ってきていることを初めて世界的に学術的な視点で指摘しました。違いの大きな“現在可能な治療による経過”のどこを根本治療のスタートラインとしたら良いのでしょうか?“現在可能な治療による経過”が一定でなければ、根本治療の効果を判定できないことになります。

そのためには、DMDの国際ガイドラインに紹介されている呼吸リハビリテーション、心筋症マネジメント、車いすや必要なアシスティブテクノロジー、熟練したケアを高める必要があります。そして、コミュニティや教育環境などで、DMDの子どもから青年まで、自尊感情がしっかり育まれることが望まれます。

Dubowitz V. Unnatural natural history of Duchenne muscular dystrophy. Neuromuscular Disord 25, 932-935, 2015.
Ricotti V, et al. Challenges of clinical trial design for DMD. Neuromuscular Disord 25, 932-935, 2015.


※(デュシェンヌ型筋ジストロフィーのDubowitz V.不自然な博物学。 神経筋Disord 25932-9352015。リコッティVほかは、DMDのために臨床試験のデザインに疑問を呈しています。 神経筋Disord 25932-9352015。)


以上を私なりに、結論づけると「DMDの遺伝子治療(筋ジストロフィー等)については成果(見えていない結果)を急ぎ過ぎている感じがある。」ということが、やはり、私達も考えなければいけないことです。癌でも何でも現在できる医療と遺伝子治療などの根本治療の開発は、両輪です。筋ジストロフィーの最新医療では、今は、根本治療にお金も世間の関心も多く集まり過ぎではではないだろうか?
それを、早く、調整していかなければ、「現在可能な治療」の国やセンターやエキスパート治療による違いが縮まりってこないと思われます。ましてや、遺伝子治療での根本治療により、本当に治ってしまう医療なら別ですが、そうでなければ、根本治療に、レベルがバラバラな「現代可能な治療」を組み合わせても、バラバラの結果しか出てこない事は明らかです。病気が無い人でも、不摂生や事故で不健康や成人病・不慮の死にならないように、いろいろ健康に気を付ける事が大切で、DMDFSHDでも、今やっている病気の専門マネジメントに、根本治療が加わって、初めて本来の効果が発揮されて来る事は最もの事です。


感じる所に
 デュボヴィッツ先生(日本に何度も招待され、国立精神神経医療センター・東埼玉病院にも、東京女子医大等も視察されています)は、そんなことをいいたかったことなのではないでしょうか?
現在可能な治療でDMD等では、倍以上に延命し、気管切開をしないなどのことでQOLも上げられる手段があるので、まず、それをしっかりしましょう、と示唆していると思われます。
それには、早急に、各国やセンターで筋ジストロフィーのエキスパートチーム医療を早期から適応できるようにして、DMD等の根本治療のスタートラインをそろえることして行きましょうと云われているとおもいます。
その上で、自然歴、ではなく、既にかなり改善した「現在可能な治療による予後」から、世界中が足並みをそろえて、根本治療の有効性を確認していきましょう、という事でもあります。
私達は、是非、他の病気と同様に、QOL向上と、根本治療の両輪で取り組んでもらわなければなりません。特に軽くないがしろにされがちなマネジメント、にもしっかり目を向けていただき、”違い”を縮めていける様に日々努力していく事が必要な事です。

最後に
世界中の非侵襲性の呼吸管理のためのセンター(病院)が紹介されています。http://www.breathenvs.com/#!centers-for-noninvasive-management/ihfvz
日本での筋ジスの50年の歴史と筋ジストロフィー医療(旧筋ジス病棟)の最後の砦を守るべく、八雲病院の医療機能の継続についての署名活動にご支援をお願い致します。
来年の国家予算の借金は30~40%とも云われています。箇々のニーズ(重い障害があっても)より改革優先(効率・医療費削減)でなく、命を最優先にしてくれる国の政策(アベノミクス)であってほしいです。
普通に生きて行きていきたいと云う気持ちを尊重して、支えて頂ける医療施設が機能移転されにあたり、もっと良くなり、八雲病院が実践している、医療が全国に広がる様にNPPVネットワーク支援機構は情報発信しています。

これをご覧の、皆様でご理解頂けたら是非お力をお貸し下さい




 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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