のインターフェースとして、フェイスマスク、マウスピース、気管切開チューブに直接接続する方法などがある。また、強制呼気では、患者の咳に同調させ、上腹部または胸壁を圧迫することによって呼気を増強する方法を用いる。
器械的テクニック(Mechanical techniques)
器械による強制的な吸気と呼気(Mechanical insufflator-exsufflators; MI-E)は、陽圧換気後に陰圧換気を行うことで擬似的な咳を生じさせる方法である[27,28]。
MI-Eを用いた場合とエアスタッキングや徒手的な咳介助を用いた場合とで比較したところ、MI-Eのほうが咳の最大呼気流速で優れていることが明らかになった[29]。
MI-E
は、これを使用すれば、入院や気管切開の必要性を回避することができるため、PCFが160
L/min前後のDMD患者にとって、きわめて重要であることが確認されており、特に、このような患者が(脊柱)側湾症を生じて徒手的な咳介助が有用でなくなった場合に重要である[8]。MI-Eに使用する装置は、有効な咳ができない神経筋疾患の小児患者42名(このうちDMD患者15名)において、耐容性良好かつ有効であった[30]。合併症として、一過性の悪心嘔気、腹部膨満、徐脈、頻脈がみられることが報告されている[28]。気管切開をしているDMD患者では、MI-E
は、従来の吸引法に比べて多くの利点があり、たとえば、末梢気道の分泌物が排出できる、気管内直接吸引による粘膜外傷が回避できる、快適性が改善するなどがある[31]。
分泌物の遊離装置(Mucus Mobilization Devices)
肺内軽打換気(Intrapulmonary percussive ventilation; IPV)の装置は、持続気道陽圧を増加させながら、低振幅で高周波数の波動気流を発するものである。
DMD1例を含む最近の症例集積研究で、肺の持続性硬化は、従来の方法では治療不応であるが、IPVを用いたところ、症状の消失に有効であったと報告されている[32]。胸壁に高周波数の振動を与える方法は神経筋疾患患者に使用されているが、勧告の基礎となるデータは発表されていない。気道クリアランスの装置はすべて、正常な咳の代用として使われるものではあるが、DMD患者の場合、咳介助との併用なしで単独で使用すると、有効である可能性は低い。
気管支鏡検査は、DMD患者に対して、持続性無気肺をみとめる場合に選択的に行うのが一般的であるが、有益性について、および治療法として、現在のところ立証されていない。気管支鏡検査については、非侵襲的な気道クリアランス法のいずれを行っても無効であることを確認し、かつ粘液栓(分泌物による閉塞)が疑われる場合に限り、考慮するべきである。
勧告(Recommendations)
・DMD患者に対して、気道クリアランスを改善するための戦略および気道クリアランスのテクニックを早期にかつ積極的に利用していく方法を指導すべきである。
・
臨床経過によって気道クリアランスが難しいことが示唆された患者、PCFが270L/min未満の患者、最大呼気圧(MEP)が60cmH2O未満の患者では、咳介助のテクニックを使用すること。
・コンセンサス委員会は、DMD患者に器械による強制吸気と呼気(mechanical
insufflation-exsufflation;
MI-E)を使用することを強く支持し、今後、MI-Eを用いたさまざまな研究を進めることを推奨する。
・ 家庭でのパルスオキシメトリーは、これを使うことによって、呼吸器疾患罹患時に気道クリアランスの効果をモニターすることができ、入院の必要性を確認するのに役立つ[8]。
呼吸筋トレーニング(Respiratory Muscle Training)
DMD患者に呼吸筋トレーニングを行う根拠は、患者に進行性病態があっても、筋肉の筋力と持久力を改善すると、将来、肺機能の維持に良い影響を与える可能性があるという仮説に基づくものである。しかし、DMD患者に対する呼吸筋トレーニングの有効性に関しては、さまざまな報告がある。筋力と持久力に相当な改善がみられたという報告もあれば、呼吸筋能力に微小または意味のない変化しかみられなかったという報告もある[33-43]。さらに、最近、運動中の筋肉にみられる一酸化窒素遊離による防御機構が発見されたが、DMD患児はこの防御機構が欠如している可能性がある[44、45]。このことから、計画に従ってトレーニングを続けていると、しだいに筋肉が損傷していく可能性がある。したがって、呼吸筋トレーニングに関しては、全面的に推奨することができず、さらなる研究を待たなければならない。
DMDの夜間非侵襲的人工呼吸療法(Noninvasive
Nocturnal Ventilation in DMD)
DMD患者は、呼吸低下、中枢性無呼吸、閉塞性無呼吸、低酸素血症などの睡眠時呼吸障害のリスクが高い。これらの肺合併症の治療に非侵襲的な人工呼吸療法を行うことにより、生活の質(QOL)を向上させ、DMDに伴う疾患の発病率や早期の死亡率を低下させるであろう[6、46、47]。
二相性陽圧発生装置(BiPAP)または人工呼吸器によって夜間の鼻マスク間欠的陽圧換気を行うことは、DMDや他の神経筋疾患における睡眠時呼吸障害および夜間の低換気に対する有効な治療法である[48-50]。閉塞性無呼吸または呼吸低下を消失させ、かつ換気および夜間の酸素飽和度を正常にするために必要な陽圧のレベルを決めるには、睡眠検査室での測定結果から求めたり、ベッドサイドで注意深いモニターと観察を行って求めたりしなければならない。患者が必要とするレベルは経時的に変化するため、鼻マスクによる間欠的陽圧換気(NIPPV)について、連続的に評価と調整を行うことが必要である[49]。DMDに対して、夜間NIPPVを行ったところ、明らかに生存率を改善し[46、51]、睡眠の質、日中の傾眠、健康と自立性および日中のガス交換で改善がみとめられ、人工呼吸療法を行わない対照群と比較したところ、肺機能低下の進み方が遅くなった[6、46、47、50、52-54]。
NIPPVによる合併症には、眼刺激、結膜炎、皮膚潰瘍、胃膨張、フルフェイスマスクへの嘔吐などがある。顔面関連の合併症は、マスクフィッティングを定期的に評価することで避けることができる。鼻へのステロイド噴霧または送気エアーの加湿によって、鼻閉を緩和することができる。また、胸膜下気胞(ブレブ)のある26歳の非Duchenne型の筋ジストロフィー患者がNIPPVを使用していたところ、再発性気胸を生じたという報告が1例ある[55]。患者に体力がない場合、マスクの位置がずれていると、急速に重度の低酸素および高炭酸ガス血症に至る。BiPAP機器の多くはアラームが内蔵されていないため、状況に応じて、パルスオキシメトリーなどによるモニタリングを追加するとよい。
その他の療法(Other therapies)
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